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大阪家庭裁判所堺支部 昭和29年(家イ)5号 審判 1954年2月06日

本籍並住所 ○市○○○町○○○○番地

申立人 木村由子(仮名) 他五名

国籍 中華民国

住所 京都市○○区○○○町

相手方 除永世(仮名)

上記申出にかゝる昭和二九年(家イ)第一号乃至第六号婚姻届及び認知無効確認請求調停事件について、昭和二九年○月○○日本件調停委員会の調停で昭和二一年○月○日市長代理助役に届出た申立人木村由子と相手方との婚姻届及び申立人木村静子、同木村正一、同木村保正、同木村亘、同木村一美に対する相手方の各認知届は無効である旨の双方間に合意ができ、その原因のあることについても争がない。当裁判所は本件添付の戸籍謄本、取寄せにかゝる大阪法務局○支局長保管の当事者間の婚姻届、及び各認知届原本申立人等各人と相手方の各陳述等を綜合して上記婚姻届及び各認知届は相手方不知の間に申立人が勝手に相手方の署名捺印等を偽造して提出したものであることが認められるので、いづれも無効であるから調停委員松○○一、同山○○ミの意見をきいて双方間の合意を正当と認め主文のとおり審判する。

主文

昭和二一年○月○日○市長代理助役受付にかゝる申立人木村由子と相手方の婚姻届、及び申立人木村静子同木村正一、同木村保正、同木村亘、同木村一美に対する相手方の認知届はいづれも無効であることを確認する。

(家事審判官 堤実雄)

申立の実情

1、申立人木村由子は当時留易商であつた相手方、除永世と恋愛し申立人由子の両親の反対を押切つて大阪市○区○○○町○○番地に於て同棲し、昭和八年○月迄に申立人木村静子、同木村正一、同木村亘、同木村保正の四人を出産、後昭和八年○月○○日当時○○郡○○村であつた現住所に移転、昭和一〇年迄に木村是之(死亡)、申立人木村一美の二人を出産した。

1、相手方除永世は昭和一二年商用と称して帰国第二次世界大戦終了后行衞不明となり現在に至つた。

1、申立人木村由子は相手方除永世の不在中昭和二一年○月○日○市○○○町○○○○番地加藤金悟氏妻美子及び同町○○○番地横山正氏(死亡)妻夏子を保証人として○市助役に婚姻届出で同時に申立人木村静子、同木村正一、同木村保正、同木村亘同木村一美の認知届出をして現在に至つた。

1、昭和二七年○月申立人正一が現在の戸籍謄本を添付して婚姻届出を○市役所○○出張所に提出したところ、同所にて申立人木村正一は形式上戸籍面に記載されているが、中国籍の相手方と申立人木村由子が婚姻し認知されて居るので当然相手方の中華民国国籍に移つて居る筈であり従つて日本国籍はないから受付けられぬ旨返答があつた。

1、そこで申立人木村正一は早速中華民国大阪総領事館に照会したところ別紙(1)の通り日本国籍が未だ喪失されて居らぬので中国籍もない旨の回答を得証明を貰つた。

1、申立人等はそこでその処理のため留日大阪華僑総会に照会したところ別紙(2)の通り証明書を貰ひ、また同会総務局長○文○氏に依頼した法務省民事課へ照会して貰つた結果その処理手続につき別紙(3)の如く連絡があつた。

1、申立人木村正一は相手方除永世が日本に来て居るという噂をたよつて相手方除永世の所在を探して居たところ昭和二八年○○月初旬相手方が肩書住所に居ることがわかつたので早速本件を申立てました。

1、現在相手方除永世は結核療養中でパスポートを別紙写真(複写)の通り持つて居るがむかし華僑であつた旨の登記書により日本に永住の申請をしてある由です。

1、管轄裁判所は相手方の住所地ですが本件の関係者全部が御庁にて処理されることについて同意しておりますので、何卒御庁にて御願いします。

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